2023.09.06

地方創生の新しいヒントを探る。山梨県議会議員・向山憲稔インタビューを公開!!

地方創生の新しいヒントを探る。山梨県議会議員・向山憲稔インタビューを公開!!

世界文化遺産である富士山をはじめ、南アルプスや八ヶ岳の山々に囲まれて自然環境に恵まれる山梨県。登山客はもちろんのこと、近年はマウンテンバイクの大会が開催されるなどアクティビティも人気を集めているという。

また、日照時間が日本一長い土地柄から、ぶどうや桃の生産量が日本一であることも知られている。そんな山梨県も全国の地方都市と同様に、人口減少・少子高齢化で若者の地元離れ、働き手不足などの課題を抱えている。

「日本一誇れる山梨を創る」をテーマに、人口減少・少子高齢化、地域経済の低迷などの課題と向き合い、持続的な発展を目指して政治活動をする山梨県議会議員の向山憲稔さんにお話をうかがった。向山さんが伝えたい山梨県の魅力と取り組みとは。

転入過多の山梨

コロナ禍以降、テレワークの促進によって地方へ移住者は増えている。首都圏から近い山梨県は、全国でも珍しく転入者が転出者を上回っている。2021年7月、芸能事務所の株式会社アミューズが本社を東京都渋谷から山梨県西湖に移転したことも記憶に新しい。さらに今年4月には株式会社ビームスと共同で体験型アドベンチャー施設「FUJI GATEWAY(フジ ゲートウェイ)」を河口湖にオープンした。

「山梨県は、街のすぐ近くに自然があって、食べ物も水もおいしい。何より首都圏から近くてこの自然環境があるというのが一番の魅力です。コロナ禍でマイナスの面も大きくありましたが、テレワーク環境の整備や移住を促進する政策は、コロナ禍をきっかけとしてより良い方向にいったのかもしれないです。アミューズさんの本社移転は、すごく勇気のいることだったと思いますが、山梨県としては多方面にいい影響が出ていて、本当にありがたいことです。ビームスさんとの体験型アドベンチャー施設がオープンしたこともあり、今後、さらに富士山周辺は移住者の増加や企業の進出が見込めて、ビジネスチャンスが多くあると思います」

「高付加価値化」と「プロモーション力」が鍵を握る

山梨は富士山、ぶどう、桃、という昔から変わらない観光資源を多く持っている。ぶどうの生産量、ワイナリー数は全国1位で県内には若い醸造家も多く、イベントを開催するなど地方創生に意欲的に取り組んでいる。ワインのさらなる発展のため、令和元年には山梨県の長崎幸太郎知事が「ワイン県」宣言をした。この定着したコンテンツをもっと活用させたい想いがある。

「醸造家の中には、海外に負けないくらい甲州ワインの価値を高めたいという意識の高い人たちもいます。山梨県としても観光産業において、“高付加価値をつけよう” ”個人消費額をもっと上げよう” と取り組みを進めているところです。富士山のある場所として通過点になるのではなく、上質で良いモノを相応の価格で提供することができれば、国内外の観光客のリピートにつながります。さらには、甲府周辺で最もイメージの強いワインを前面に出して、富士山エリアに集中する観光客の周遊も促すことが必要です。そのためにも山梨県産の食材を使用した料理とワインとのマリアージュを広く発信していく取り組みを県が進めています。ワイン県としての認知度が広がっていけば、山梨の価値向上に発展していくので、さらなるプロモーションや情報発信が必要だと感じています」

集客やシンボルの強さで言うと、やはり富士山。世界文化遺産登録10周年を迎え、環境を守りつつも、インバウンド観光客の増加など富士山を活かしたさらなる観光施策が必要だと考えている。

「2014年に本格的に『富士山保全協力金』の徴収が始まりました。いわゆる入山料ですが、任意の協力で基本1人1,000円です。ただ、徴収率は100%には程遠く、海外の入山料と比較して安価なことから、関係者からは金額アップを望む声も聞かれます。世界文化遺産登録から10年の節目に、あらためて文化遺産として富士山の価値を見つめ直すとともに、自然環境を保全する取り組みが求められています。加えて、観光客のさらなる関心を集める仕組みづくりを進めて、個人消費額の増加につながるようなコンテンツを創出することができれば、インバウンド集客にもつながっていくはずです」

カーボンニュートラルの実現に向けて山梨県をモデルタウンに

いま県内では「水素エネルギー」に力を注いでいるという。二酸化炭素を出さない、クリーンエネルギーとして注目される「水素エネルギー」甲府市米倉山にある施設では、山梨県企業局、東京電力ホールディングス株式会社、東レ株式会社、株式会社東光高岳等が共同で実用規模でのCO2フリーの水素社会構築を目指したP2Gシステム技術開発事業等を行っている。この事業は、天候などにより大きく変動する太陽光発電などの再生可能エネルギーの不安定な部分の電力を利用した、水の電気分解による水素ガス製造システム(Power to Gasシステム)と製造した水素ガスを水素吸蔵合金に貯める水素製造貯蔵技術である。今年3月には、トヨタやホンダなど日本の産業界が結集した技術者集団「FC-Cubic(エフシー・キュービック)」が研究開発の拠点を東京から米倉山に移し、水素燃料電池の実用化に向けた研究をするための動きも始まっている。山梨県のポテンシャルは、甲府市米倉山で開花するかもしれない。

「甲府市の米倉山で、山梨県企業局や東京電力等が共同でCO2 フリーの水素社会構築を目指した水素ガス製造システム(Power to Gasシステム、通称:P2Gシステム)技術開発事業を行っています。水の電気分解によるP2Gシステムにより製造した水素ガスを輸送・利用するための水素出荷設備などについても実証を行っており、県内の工場やスーパーマーケットで利用する実証事業も始まりました。米倉山は、遠くない将来に開業予定のリニア中央新幹線の新駅からも近く、甲府市はCO2 フリーの水素社会の考えに沿ったまちづくりも検討しています。山梨、甲府でしか体験できないもの、近未来都市として、住宅やお店などのエネルギーを水素で賄えるようなことができれば、多くの期待と投資を集めることができると思います。行政だけの力ではなく、民間の投資を呼び込みながら中長期的なまちづくりを進めることができれば、山梨、甲府の価値向上につながります。AIや次世代技術と掛け合わせて、たくさんの人がワクワクするような流れができれば、人を呼び込めるはずです」

期待感が高まるこの取り組み。化石燃料がない生活のニーズは世界中でもっと増えていくだろう。今後、若い世代にも伝えるためには、仕組み作りと発信力が必要となっていく。住んでいる人たちが郷土に誇りと愛情を持って発信してこそ、はじめて外からの動きや知恵の活用が活きてくる。

「日本政府が2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする『カーボンニュートラル』を目指す、と言っても一般感覚では分かりづらいのが実際ではないでしょうか。一般市民の目線に立って、より分かりやすくCO2フリーの社会がもたらす未来、水素エネルギーの可能性を発信していく必要があります。議員の立場としても分かりやすく伝えていきたいと思います。特に、次世代を担う子どもたちには、より分かりやすいコンテンツで発信をすることが求められます。時に影響力のある方々、大手の企業にも協力してもらいながら、新しい取り組みとして広報周知を進めていくことが大切だと思います」

向山憲稔さん 山梨県出身、明治大学卒業後、山梨日日新聞の記者として7年間活動。退職後の2015年に甲府市議会議員選挙で初当選。1期務め、現在は山梨県議会議員2期目として政治活動に取り組んでいる。